輪島塗(わじまぬり)は、石川県輪島市で生産される、日本を代表する高級漆器です。「堅牢優美」(けんろうゆうび:堅牢で丈夫でありながら、優れて美しい)と評される耐久性と美術的な美しさが最大の特徴です。
輪島塗は、日常生活で使える道具としての実用性と、世代を超えて受け継がれる芸術性を兼ね備えた、日本の誇る伝統工芸品です。

産地
石川県輪島市
主な特徴
驚異的な耐久性を生む「本堅地(ほんかたじ)」技法
輪島塗の最も重要な特徴は、その丈夫さです。これは「本堅地(ほんかたじ)」と呼ばれる、輪島独自の高度な下地工程によるものです。
  • 地の粉(じのこ): 輪島特産の珪藻土(けいそうど)を焼成して粉末にした「地の粉」を漆に混ぜ、何度も塗り重ねることで、非常に強固な下地を作ります。
  • 布着せ(ぬのきせ): 欠けやすい器の縁や底などの部分に、麻布などを漆で貼り付けることで補強し、耐久性を格段に高めています。
  • 修繕が可能: この堅牢な作りのおかげで、万が一割れたり欠けたりしても、漆で修理(直し)が可能であり、100年以上使い続けることができると言われています。
徹底した「分業制」と「124工程」
一つの製品が完成するまでに、木地師、塗師、蒔絵師、沈金師など、それぞれの専門職人が連携する完全分業制が採られています。
  • 製品にもよりますが、総工程数は124回にも及び、全ての工程が熟練の職人による手作業で行われます。この緻密な分業体制が、品質の安定と高度な技術の維持を可能にしています。
豪華で優美な「加飾(かざりつけ)」技術
堅牢な塗りの上に施される、華やかな装飾が「優美さ」を際立たせます。
技法特徴
蒔絵(まきえ)漆で絵を描き、乾かないうちに金・銀などの金属粉を蒔き付けて定着させる技法。平蒔絵、高蒔絵など多様な表現があります。
沈金(ちんきん)ノミを使って漆器の表面に文様を彫り、その溝に漆を摺り込み、金箔や金粉を埋めて装飾を施す技法。輪島塗の分厚い塗膜あってこその技法です。
呂色(ろいろ)上塗りの後、研炭(とぎずみ)で研磨し、漆を摺り込んでは磨き上げる作業を繰り返し、奥深く鏡のような光沢を出す技法です。