眞葛焼(まくずやき)は、京都から横浜に移り住んだ初代 宮川香山が、明治時代初期(1871年)に横浜で開窯し、主に海外への輸出を目的として制作した陶磁器の総称です。

産地
神奈川県横浜市
器の種類 
  • 陶器
  • 磁器
主な特徴
高浮彫(たかうきぼり)の超絶技巧(明治初期)
眞葛焼が国際的な名声を得た初期の最大の特徴は、陶器の表面に施された彫刻的な装飾です。

高浮彫(たかうきぼり): 器の表面に、動物、昆虫、草花などのモチーフを極めて写実的に、かつ立体的に盛り上げて表現する技法です。

  • その細密な造形は、まるで生きているかのように見え、陶器の枠を超えた彫刻芸術として当時の欧米で熱狂的に評価され、「マクズ・ウェア(Makuzu Ware)」として知られました。
  • : 蟹や蛇などが器体に張り付いているようなデザインが有名です。
洗練された磁器表現(明治中期以降)
初代香山は、高浮彫で世界的な地位を確立した後、金の海外流出を防ぐ目的や、より高度な芸術性を追求するため、作風を大きく転換しました。
  • 釉下彩(ゆうかさい): 釉薬の下に顔料で絵付けを施し、透明な釉薬をかけて焼き上げる技法を研究し確立しました。これにより、絵の具が剥がれる心配がなく、色の発色が鮮やかで奥行きのある表現が可能になりました。
  • 磁器への移行: 陶器中心だった初期から、優美な白磁の胎土を用いた磁器が制作の中心になりました。清朝磁器の技術を参考にしながら、青磁窯変(ようへん)釉など、洗練された単色釉や複雑な釉薬技法を駆使しました。
  • 作風: 装飾過多な高浮彫から一転、シンプルで優雅な器形と釉薬の美しさを際立たせた、近代的な造形美へと変化しました。