古風焼(こふうやき)は、愛知県西三河南部を中心に作られる三河焼の一種で、主に植木鉢などに用いられる灰黒色の焼きものです。三河の赤土を用い、高温で焼成した後に還元焼成を行うことで、赤褐色の素地がグレーから黒灰色へと変化し、落ち着いた「いぶし」の表情が生まれます。

備前焼や唐津焼のように独立した歴史的産地名を示す焼きものではなく、三河焼の中で用いられる焼成・仕上げの呼称として知られています。窯の中の位置や炎の当たり方によって色調に差が生まれ、素朴で渋い風合いを持つ点が大きな特徴です。

産地
愛知県碧南市・安城市・西尾市・高浜市など
器の種類 
  • 陶器
主な特徴
いぶし還元焼成
古風焼は、酸素を制限した窯内で還元をかける「いぶし還元焼成」によって、灰色から黒灰色の落ち着いた色調を生み出す焼きものです。赤褐色に焼き上がる鉄分を含んだ土も、還元状態で焼成することで渋い灰色系の表情へと変化します。

三河焼の古風焼では、赤土を一度高温の酸化状態で焼成した後、窯内を酸素不足の状態にして還元を施す方法が用いられています。製造元では「いぶし還元焼」と説明されており、赤焼と同じ素地であっても焼成方法の違いによって大きく異なる色調に仕上がります。

灰黒色の渋い色調
古風焼を特徴づけるのが、銀灰色、灰色、黒灰色などの落ち着いた色彩です。鮮やかな釉薬による発色とは異なり、土と焼成によって生まれる渋く静かな表情が魅力です。

還元焼成によって窯内の酸素が不足すると、鉄分を含む土の発色が変化し、赤色系の素地がグレー系の色調へと変わります。製品によっては赤土本来の赤みがわずかに残ったり、銀色を帯びたりすることもあり、均一ではない自然な色彩を楽しめます。

窯変による個体差
窯の中の位置、炎の当たり方、温度、還元状態などによって色の濃淡や表情が変化します。同じ形の作品でも、一点ごとに微妙な違いが生まれることが古風焼の特徴です。

還元焼成は窯内の雰囲気に影響されやすく、グレーの濃淡、黒味、銀色の光沢、赤みの残り方などに差が生じます。三河焼の古風焼でも、製造元が窯変による個体差が大きい焼きものとして説明しています。

無釉の土味
古風焼には、釉薬による光沢ではなく、素地そのものの質感や焼成による色彩を生かした作品が多く見られます。土のざらつきや焼き締まった質感を直接感じられる点も魅力です。

表面を釉薬で覆わないことで、土の粒子や成形跡、焼成による色の変化がそのまま作品の表情になります。ただし「古風焼」という名称の使われ方は窯元や製品によって異なる可能性があるため、すべての古風焼が必ず無釉であるとは断定せず、個々の作品を確認する必要があります。

高温で焼き締める
古風焼の中には、一般的ないぶし焼より高い温度で焼成し、土をしっかりと焼き締めたものがあります。焼成温度を高めることで、硬さや耐久性を持たせています。

三河焼の古風焼では、通常のいぶし焼が900℃前後で焼成されるのに対し、古風焼は1100〜1150℃前後まで高温で焼成する例があります。高温の酸化焼成後に還元を施すことで、焼き締まりの強さと古風焼特有の灰色系の色調を両立させています。

土と焼成による発色
古風焼の色は、単に表面へ着色したものではなく、土の性質と窯内の焼成条件によって生み出されます。鉄分を含む土が還元焼成によって灰色系へ変化することで、独特の落ち着いた色合いが生まれます。

三河焼の古風焼では、赤焼と同じ三河の赤土を使用する例があります。同じ素地でも、酸化焼成では赤褐色、還元焼成では銀灰色から黒灰色へと変化するため、古風焼の色彩は焼成そのものが作り出したものといえます。

素朴で落ち着いた佇まい
華やかな絵付けや鮮やかな釉色ではなく、灰色や黒灰色の色調と土の質感を生かした、素朴で落ち着いた佇まいが古風焼の魅力です。和の空間にもなじみやすく、器や植木鉢など幅広い用途で渋い存在感を見せます。

還元焼成によるくすんだ灰色や銀色は、見る角度や光によって微妙に印象が変化します。表面に生じる色むらや窯変も含め、均質さではなく焼きものならではの自然な表情を楽しむことができます。